海外取引における為替換算レートの選定と実務対応

海外企業との取引を始めたものの、「為替換算の方法が分からない」「税務処理の基準があいまい」――そんな悩みをよく耳にします。
実際、海外取引では会計上・税務上で使用する為替レートが異なり、実務上の判断が求められる場面が多くあります。
この記事では、海外取引を行う企業を顧問として支援する立場から、TTM(仲値)を中心とした為替換算レートの選定と実務対応のポイントを解説します。

会計上の換算レート(仕訳計上時)

海外との取引を行う場合、取引の性質により使用する為替レートが異なります。一般的には、銀行が公表する「TTM(仲値)」を用います。

取引の種類使用するレート説明
売上・仕入・役務提供など取引発生日の為替相場(TTM)取引日(請求書日・検収日など)のレートで円換算
預金・売掛金・買掛金などの外貨建資産負債決算日のレート(TTM)期末換算し為替差損益を計上

税務上の換算レート(法人税申告用)

法人税基本通達 2-1-2 により、取引発生時の為替相場を原則としますが、継続して合理的な方法を用いる場合(例:月平均レート)は認められます。

方法内容条件
取引発生日のTTM各取引日の仲値最も原則的な方法
月末レート月末日のTTMで月内全取引を換算継続適用が条件
月平均レート月内の平均TTMなどを用いる継続適用が条件

ドル建て預金の換算方法

外貨建て銀行預金は「期末日のTTM」で円換算し、為替差損益を計上します。期中はドル建てで管理し、決算日にまとめて評価替えを行うのが一般的です。
例:USD口座10,000ドル、期首レート150円、期末レート155円の場合、差額50,000円が為替差益となります。

為替レートを毎日調べるのが大変な場合の対応

実務では以下のような簡略化や自動化が推奨されます。

方法内容税務上の扱い特徴
月平均TTM日銀や三菱UFJ銀行の月平均レートを使用通達で容認手間が少なく正確
月初TTM毎月1日付レートを使用継続適用で容認簡便で一貫性あり
Power Query等Webから自動取得問題なし更新ボタンで自動化
クラウド会計システムが自動換算問題なし自動で期末換算仕訳

推奨は「月平均TTM」または「月初TTM」を継続採用する方法です。Power Queryで為替データを自動取得する設定も有効です。

【初心者向け】TTMとは?

TTM(Telegraphic Transfer Middle rate/電信仲値)とは、銀行が毎日公表している為替レートの一種で、「TTS(電信売相場)」と「TTB(電信買相場)」の中間値を意味します。企業会計や税務では取引や決算換算の標準レートとして広く用いられます。

用語説明例(1ドル=150円の場合)
TTS(電信売相場)銀行が外貨を「売る」時のレート(円高)151円(円を多く払う)
TTB(電信買相場)銀行が外貨を「買う」時のレート(円安)149円(円を少なく払う)
TTM(仲値)上記2つの中間値(平均値)150円

つまり、TTMは「1ドル=いくら円か」を示す平均的な基準レートです。税務・会計では、取引日または月平均のTTMを継続して使うことで正確な換算が可能になります。

📌 実務上のポイント:

  • 三菱UFJ銀行や日本銀行のWebサイトで毎営業日公表される。
  • 税務・会計ともに、取引日または月平均のTTMを継続して用いれば問題なし。
  • 為替差損益の計算にもこのレートを基準とするのが一般的。

まとめ
期中では基本TTMですが、毎日調べるのは大変なため月初めのレートを使用する等継続的に企業がきめているルールでしてみてください。
決算時には月末のTTMで預金・売掛金・買掛金などの外貨建資産負債を換算して為替差損益をだしますので、ご注意ください。