税務調査におけるAI・データ活用の実態はどうなの、税務署側は何を見て、どう調査先を選んでいるのか?
― 税務署側は何を見て、どう調査先を選んでいるのか ―
近年の税務調査は、帳簿を1枚ずつ確認する方式から、
電子申告データ・電子帳簿データを前提とした分析型調査へと大きく変化しています。
税務署側では、申告書等の電子データを活用し、
調査対象の選定や事前分析を効率化しています。
本記事では、
- 税務署側が行っている実務
- 調査対象の選定方法
- 調査官が最初に確認するポイント
を、国税庁の公表資料・実務ガイドラインに基づいて整理します。
税務署側の調査は「電子データ前提」
法人税・所得税・消費税の申告書や勘定科目内訳書等は、
e-Taxを通じて電子データとして提出・管理されています。
税務調査においては、これらの電子データを活用し、
- 過年度との比較
- 同業・同規模法人との比較
- 税目間(法人税・消費税等)の整合性確認
が行われます。
「国税当局においては、申告書等に係る情報を電磁的に管理し、
各種分析を行った上で調査対象の選定等を行っている」
― 国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より[脚注1]
① AI的分析による「調査対象の選定」
税務署では、すべての申告を人の目で確認しているわけではありません。
申告内容について、
- 売上・所得・利益率の変動
- 経費構成の不自然さ
- 消費税の課税関係の変化
- 過去の調査結果との乖離
などをもとに、
分析・抽出(スコアリング的な考え方) が行われています。
「申告書等の情報を分析し、
調査必要性の高い納税者を効率的に把握する取組を行っている」
― 国税庁「税務行政の将来像」より[脚注2]
※ なお、
AIやシステムが自動的に更正・否認を行うことはありません。
調査対象の「抽出」までがシステム、
その後の判断は調査官が行います。
② 調査官が最初に確認するポイント
税務調査において、調査官が最初に確認するのは
帳簿の細部ではありません。
まず確認されるのは、
- 申告書全体の数字の流れ
- 前年・前期との比較
- 同業他社との水準差
- 勘定科目間の整合性
- 電子帳簿・仕訳データの一覧性
です。
「調査に当たっては、
申告書、決算書、関係資料等を総合的に検討し、
重点的に確認すべき事項を把握した上で実施する」
― 国税庁「税務調査手続の概要」より[脚注3]
つまり、
「数字の正しさ」以前に「数字のつながり」 が見られています。
AIは調査官の代わりではない
現在の税務調査におけるAI・システムの役割は明確です。
- 調査対象の選定
- 事前分析・比較
- データ整理・抽出
これらはシステムが担いますが、
- 調査時の質問
- 事実認定
- 是認・否認
- 更正判断
は、必ず調査官(人)が行います。
「国税に関する処分は、
法令に基づき職員が判断し、行うものである」
― 国税庁 税務調査関係説明資料より[脚注4]
まとめ
現在の税務調査は、
「AI・データで怪しい申告を選び、
人が調査し、人が判断する」
という仕組みで行われています。
そのため、調査対応で重要なのは
資料を出すことよりも、説明が通る構造になっているかです。
当事務所も決算終了時には、必ず前年対比して急激に変化のあった科目の内容を確認したり、顧客との会話で同業他社の数値をもとに話をしています。
出典(リンク付き)
[脚注1]
国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」
国税庁が税務行政のデジタル化方針(将来像2023)として公表している資料本体。
👉 https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/index.htm国税庁
(PDF版はこちら↓)
👉 https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/pdf/syouraizo2023.pdf国税庁
内容例:
- 納税者利便性の向上
- 課税・徴収事務の効率化・高度化
- 事業者のデジタル化促進
などの構想が示されています。 国税庁
[脚注2]
国税庁「税務行政の将来像」
「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」の根幹となる将来像(DX方針)そのもの。
👉 https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation/index.htm国税庁
こちらは**「税務行政の将来像2.0」**として以前に公表された資料で、
「DXで税務手続・業務を抜本的に見直す方針」を明示しています。 国税庁
[脚注3]
国税庁「税務調査手続の概要」
※こちらは公式PDF資料として国税庁が公開している文書です。
(PDFは国税庁サイトの調査手続系資料に含まれますが、直接PDFの検索名が異なる場合があります)
例として、調査の進め方・重点事項に関する公式解説ページはこちら:
👉 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntokoku/topics/chosahandbook.htm
(※上記は「税務調査ハンドブック/調査手続の概要」案内ページです)
👉 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/chosahandbook/pdf/chosahandbook.pdf
(※実際の調査手続き・重点チェック一覧などが載る公式ハンドブックPDF)

